「烏を鷺」
ということわざは、黒い鳥を白い鳥と言いくるめるところから、非を理に、理を非に言いたてることのたとえだ。ま、詐欺みたいなもんだね。
「詐欺」
といえば結婚詐欺だが、こんなふうに�結婚しない女�と�結婚したい男�が増えてくると、だいぶ様子もちがってくるのではなかろうか。ふつう、結婚詐欺は、騙すのが男で、騙されるのが女と決まっていたものだけれど、どうやらそれが逆になる気配である。
結婚するようにみせかけ、ナニガシかの金品を貢がせて結婚しない。ホント、女に結婚願望がなければ、男もそれにつけこむ余地がなくなるわけだ。
それにしても、結婚しているのに「結婚していない」と言って相手を騙すのと、結婚していないのに「結婚している」と言って相手を騙すとでは、いったい、どっちのほうが罪が重いだろう? わたくし、これを考えはじめると、夜も眠れない。
あの島崎藤村がつくった『藤村かるた』に、
「賢い鴉は黒く化粧する」
というのがあるそうな。黒を白と言いくるめるのではなくて、黒を黒と言いくるめるのである。
黒いものは、いっそ黒くしてしまったほうが、黒さが目立たない——ということか。