面と向かって、
「あなた、浮気しましたか?」
と訊かれ、
「ハイ、しました」
と答える馬鹿はいない。まして妻(あるいは夫)が傍《そば》にいれば、なおさらだ。
それでも、インタビュアーがスターに、
「あなた、浮気しましたか?」
と訊くのは、
「いいえ、しませんでした」
と言うチャンスを与えてやりたいからである。そういう場合は、かりに彼女(あるいは彼)と関係があってもなくても、スターたるもの、断々固として「ありませんでした」と言い張らねばならぬ。
それが、いかにもシラジラしく、インタビュアーが、
「おい、イイ加減にしろよ。こっちはネタがあがってるんだ」
と怒鳴り出したくなるようなケースでも「ありません」と言いつづけることが大切だ。そのうちに訊いてるほうが恥ずかしくなって「オレ、やーめた」と言ってくれる。
ホント、こういうことは、訊かれるほうより、訊くほうが恥ずかしいもんです。訊くほうは、恥ずかしさ覚悟で訊いてくる。
ことわざにも、ちゃんと言うではないか。そう、聞くは一時に恥——と。
ああ、恥ずかしい。