下さる物なら夏も小袖
この世には、たしかに、
「くれるものなら、なんでも貰う」
という輩《やから》がいる。女の体でもなんでも、遠慮せずに貰っちゃう。
くやしいかな、わたしには、それができない。女のひとににじり寄られて、
「ねぇ、いいのよ」
と言われたところで、イヤなものはイヤだ。
「ヤセガマン」
と言いたい奴には言わせておけ! わたし自身は、
「据え膳食うは男の恥」
と、心得ている。
「下さる物なら夏も小袖」
ということわざの�小袖�は、絹の綿入れのことで、夏には用がない。それでも「くれる」と言う以上は貰っておこう——というほどの意味である。
要りもしない小袖を貰って、どうするのか? 恥ずかしながら、女房以外に何人も女をつくるようなものだろう。
ホントに、一夫一婦制でよかった。これが、一夫多婦制だったり、多夫一婦制だったり、あるいは多夫多婦制だったりしたら、夏でも小袖を貰わなくちゃなるまい。
「女と火のそば夏でもいい」
ということわざもあることはあるが、わたしはイヤだ。なんたって暑苦しい。暑苦しいのは、苦手である。