「芸は身を助ける」
とはいうものの、なまじ余技を習い覚えたばっかりに、そっちのほうにウツツを抜かし、本業をホッタラカシにして、
「芸は身を滅ぼす」
ということだってあるだろう。そういうのを、
「芸は身の仇」
という。
しかし、裕福な暮らしをしていた時代に道楽で習い覚えた芸が、おちぶれた後の生活のタツキになるなんざあ、粋なもんじゃないか。なにやら歓楽尽きて哀切極まりない感じである。
俳聖・芭蕉に、
おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな
という句があるが、まさにそれだろう。芭蕉に詠まれた鵜舟の鵜は、
「芸が身を助けるほどのふしあわせ」
と、わが身をかこっているかも知れぬ。
それにしても、ちかごろのテレビタレントたちには、身を滅ぼすほどの芸もない。ヘンに芸があった日にはホサれてしまうんだそうで、タレントすなわち芸能人も大変である。
俗に、
「芸はなくても芸能人」
というけれど、芸能人から「芸」をとったら、ノージンだろう。そういうノージンに限って「ノーのないのを�芸人�と申します」なんて、くだらないシャレを言っている。