「いちばん最初に……」
と口に出してから、最初の�最�には�いちばん�という意味がこめられているのに気づき、
「しまった! これは�重ね言葉�だ」
と、ホゾを噛《か》んだ。それこそ「後悔さきに立たず」を「あとの後悔さきに立たず」と言うようなもんである。
なにはともあれ、コトが終わってから、
「ああすればよかった、こうすればよかった」
と思ったところで、取り返しはつかない。
が、コトを起こす前には気がつかなかったことも、コトが終わってから、あれこれ気づくことが多いから、シャクにさわる。
このあいだも、テレビのクイズ番組の録画撮りに出演したけれど、アガッちゃって散々の成績だった。が、放映前、女房・子供に、
「いまなら、ぜんぶ当てることができるゾ」
と威張ったら、
「アタリマエでしょ?」
と笑われた。
ところで、重ね言葉の典型的な例は、
「往年の昔の武士のさむらいが、馬から落ちて落馬して、女の婦人に笑われて、真ッ赤になって赤面し、腹ァ切って切腹した」
というやつだろう。言っちゃナンだが、わたしたちが�幼少の砌《みぎり》の小さい頃�には、みんなして、こんな言葉遊びをして遊んだ——いや、楽しんだものである。