「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
ということわざの出典は『後漢書』の「班超伝」だそうだ。諸橋轍次先生の『中国古典名言事典』(講談社学術文庫)にも、ちゃんとそう書いてある。
「虎児を得ず」
と覚えていたのが「虎子を得ず」というのが正しい——と知っただけでも『中国古典名言事典』をひっくり返した価値はあった。虎児だと、なんとなく「虎の子」という感じが出ないもんね。
虎の子——
もちろん、女房のヘソクリである。その虎の子をチョロマカすには、どうしたって、虎の住む洞穴に入って行くような危険を冒さなければならない。
「虎穴に入らずんば」
というところを、
「虎穴を探らざれば」
というひともいるらしいが、これは、あまり感心しない。わたくし、根がスケベなもんだから、どうしてもエロチックに考えちゃう。
いまや、ヘソクリは、女房じゃなくて、亭主がする時代なのである。月給なんか、みんな銀行振り込みで、家計は女房にガッチリ抑えられているから、たいへんである。
その間隙《かんげき》を縫ってヘソクッた虎の子は、トーゼン、麻雀に使われる。なにしろ、虎に雀はツキモノですから……。