ホントは、
「来ぬか来ぬかと三度言われても婿と養子には行くな」
と言うらしい。よくよくのことがない限り、婿養子になんかなるもんじゃない——という、ありがたーい教訓である。
婿養子は、舅姑《しゆうとしゆうとめ》に仕えるほか、家つき娘である妻にも気兼ねしなければならないので、心身の苦労が絶えない。もちろん、封建的な家族制度下での話だ。
しかし、いまは、どうだろう? 相手に、
「来ぬか来ぬか」
と二度も言われたら、二つ返事で、
「うん、行く」
と答える若者が多いのではなかろうか。
とにかく、結婚しない女が増えているのである。それなのに、なぜか男は結婚したがっている。
しかも、結婚したって住む家はない。ところが、相手は家つきだ——ときた日にゃ、
「ちっとやそっとの苦労はガマンする」
と言うのが、いまどきの若者の心情だろう。
そんなわけで、
「粉糠三合あったら婿養子に行くな」
と言うことわざは、いまや、
「粉糠三合あっても婿養子に行く」
と言うほうが正しいみたいだ。さて、こういうのを「男らしい」と言うべきか、それとも「男らしくない」と言うべきか。