俗に、
「カカア天下」
という。妻が夫をアゴで使い、夫の頭が上がらないことである。
「なんだ? オマエの家のことではないか」
などと言うなかれ。わが家がそんなふうにみられていることが女房に知れたら、それこそオレは叱られる。
キツい細君がいた。同僚が、酔っぱらった亭主を介抱して自宅まで送ってきたら、
「あなたたちが飲ますから、いけないんです」
と、同僚にまで噛みついたらしい。
翌日、会社で「スゲェなあ」と同僚たちからからかわれ、彼は言ったそうだ。
「オマエなんか、偶《たま》だから、いいよ。オレなんか、毎日だぜ」
ゴマメは、田作りともいって、カタクチイワシを干したものである。古くから祝いの魚として、正月などに用いられた。
「ごまめでも尾頭つき」
「ごまめのととまじり」
ということわざがあることからもわかるように、小さな魚の代表だ。転じて、非力の者を指す。
されば、
「ごまめの歯ぎしり」
というのは、
「いくら亭主が女房に気張っても、無駄だ」
ということにならないだろうか。