女のひとが、
「子育ても終わったので」
と喋っているのを耳にするたびに、いやーな感じになる。ホント、失礼も顧みずに、
「へー、子育てって終わるものなんですか?」
と訊いてやりたいような気分である。
「わたしたち夫婦には、さいわい子供がいないから……」
と言ったひとがいる。とくに名を秘すが、いまを時めく女性の放送作家である。
そういうひとが、嫁と姑の問題やら、子供の進学の問題やらを書いているんだから、テレビはコワい。子供を育てるのはたしかに厄介だが、子供を育てることで親も育っていくことだってある。
それにしても、わたくし、
「子を持って知る親の恩」
ということわざが、そんなに好きじゃない。
さっきの、
「わたしたち夫婦には、さいわい子供がいないから……」
と言った女流の放送作家の言葉とは違った意味で、どこかウサンくさいのだ。
「自分で子供を持ってみてはじめて、子供を育てることがどんなものであるかがわかる」
ということだが、さて、どんなものだろう? 子供のときに親のありがたさに思いがいかないような人間は、親になっても、親のありがたさなんてわからないんじゃなかろうか。