「酒は、めったに飲まない。飲むのは、月・水・金と火・木・土だけだ」
というのが、バカの一つ覚えみたいな、わたしの冗談である。そう言うと「じゃあ、日曜は?」と訊くひとがいるが、日曜は、週にいっぺんしか飲まない。
酒についてのことわざは、
「酒は百薬の長」
ということわざに代表されるように、酒を愛し、讃《たた》えるものと、
「酒は百毒の長」
ということわざに代表されるように、酒の害を強調するものに大別できる。同じ酒が、飲む人によっては薬にもなり、毒にもなる。
わたしは「酒の上」のことは認めたくない。
女のひとのなかには、
「飲ませれば口説いてくれる」
とカンちがいして、無理やり飲ませようとするひともいるけれど、あれは、やめたほうがいい。わたくし、酒を飲むと、悪いクセがあって、酔うのである。酔うと、どうなるか——というと、
「女のひとが綺麗にみえてくる」
というのはウソで、女のひとなんかどうでもよくなってしまう。
酒は、ケンカを売ったり、女を口説いたりするために飲むものではない。そんなことをしたら、酒に申しわけない。あれは、あくまでも酔いざめの水を飲むために飲むものだ。