みごとなヒップであった。こっちは根がスケベだから、つい見惚《みと》れた。
そういう気配は、いちはやく相手にもわかるらしい。振り返るとニッコリ笑って、
「触る?」
とおっしゃった。とたんにノドを鳴らしちゃったんだから、われながら、だらしがない。
すると、相手はこともなげに言ったのである。
「でも、すぐに孕《はら》むわよ」
みずから「評論家」と称する女性に会ったときのことだ。恥ずかしながら、クシュンとなった。
しかし、わたしは、この一言で、彼女が、
「結婚したい、結婚したい」
と言いながら、いつまでも独身でいる理由がわかったような気がした。
「触らぬ神に祟りなし」
ということわざは、本来は、
「なにごともかかわりさえもたなければ、害を受けることもない」
といった意味であろう。ものごとに積極的であることを諫《いさ》めているような、あんまり嬉しくないことわざである。
ところが、彼女にかんする限りは、
「出しかけた手を引っ込めて、正解だったな」
と思う。いくらナンでも、わたしは、その場になって「触る?」と、いちいち念を押すような女のひとの尻など触りたくない。
触らぬ尻に祟りなしだ。