冗談半分に、
「失恋したことがない」
と言ってきた。恋をしたことがないんだから、失恋するはずがない。
「冗談半分に」
ということは、
「真面目半分に」
ということだ。マジメな話、フラれるのがコワくて、惚れなかっただけのことだ。
何かやろうとしても、失敗を恐れて、積極的に行動することがない。何事も、行動せずに終わっている。
われながら「ダメだな」と思う。わたしにとって、失敗は「成功のもと」ではなくて「不成功のもと」だった。
誰だ? 「不性交のもとだろう」ナンテ言うのは!
ところで、
「失敗は、なるたけしない方がよいにきまっている。けれども、真にこわいのは失敗することではなく、いい加減にやって成功することだ」
と言ったひとがいる。詞集「たいまつ」のむの・たけじさんである。
失恋を恐れて、恋に臆病になっているうちは、いい。フラれ馴れ、やがてフラれるのがコワくなくなり、ヘンにチョッカイを出して、これがまたウマくいっちゃった日には、目も当てらンない。