いつも不思議に思うのだが、ホントに正直な人間が、こんなことを言うだろうか。ホントに正直な人間なら、こんなこと、言わないんじゃなかろうか。
わたくし思うに、
「正直者が馬鹿をみる」
という言葉の裏には「不正直者がトクをする」といった意味がこめられているような気がするけれど、どうだろう? 正直な人間が不正直な人間を羨んでいる気配である。
「正直である」
ということは「ズルくない」ということだろう。働かないくせに働いたようなフリをしたり、罪を犯しているくせに犯さないような顔をしたり……といったことができない。
だいたいが、
「働かないくせに働いたようなフリをしたり、罪を犯しているくせに犯さないような顔をしたり……」
といった考え方そのものがないにちがいない。とてもじゃないが、不正直者のわたしには、及びもつかぬ。
わたしは、根が不正直なもんだから、誰かがうまいことをやったり、要領よく立ちまわったりするのをみると、
「羨ましいな」
と思う。が、羨ましいと思うだけで、自分もそうしてみようとは思わない。だいいち、メンドくさいことでもありますし……。