何度でも書くけれど、
「バカをバカと言って、どこが悪い?」
というのまでが�許せる冗談�で、
「ブスをブスと言って、どこが悪い?」
というのが�許せない冗談�だ。冗談にも�許せる冗談�と�許せない冗談�がある。その境目がむずかしい。
とにかく、人を傷つける冗談はよくない。なかでも、体の欠点や容貌をタネに他人をからかうのは、不愉快だ。
自慢じゃないが、ちいちゃいときから、みんなに、
「ブオトコ、ブオトコ」
とからかわれてきた。おかげで、トルストイの自叙伝に感激したりした。幼いトルストイは、実の母から、
「レオや、お前はいい子にならなきゃいけない。お前は顔が醜いから、顔では誰も可愛がってくれないよ」
と言われるのである。
「ブオトコ、ブオトコ」
と言われつづけてきて、気がついたことがある。このわたしをつかまえて、容貌をタネにからかおうとしている奴らの顔は、気の毒ながら、わたしとおっつかっつ[#「おっつかっつ」に傍点]だ。
「あいつらは、自分の顔に自信がないから、自分がからかわれるかも知れないことにおびえ、他人をからかおうとしているのだ」
そう考えたら、ずいぶん気がラクになった。