知ればこそ腹も立つけれど、知らなければ腹も立たない。女房の浮気だって、知らなきゃ新橋ガーラガラだ。
書いているうちに、自分でもワケがわからなくなってきた。どうやら、
「知らぬが仏」
ということわざと、
「知らぬは亭主ばかりなり」
ということわざとをゴッチャにしちゃったようだ。
「知らぬは亭主ばかりなり」
というのは、もともとは「町内で知らぬは亭主ばかりなり」という川柳から出ている。女房が間男しているのを、近所の者はみんな知っているが、
「亭主だけが気づかない」
という意味である。
世の中、えてして当事者はウカツなのである。それで、近所の連中が集まって、
「注意してやろうか」
と、噂する。
「よせよ」
「だって、あんまりじゃないか」
「よせったら、よせ」
「どうして?」
「昔っから、言うだろ」
「なんて?」
「知らぬはホットケって……」
やっぱり「知らぬが仏」なのである。