いわゆるワケ知りが、
「ヘソから下に人格はない」
ナンテ嘯《うそぶ》いているのを聞くと、それだけで相手を軽蔑したくなる。ヤボを承知で言わせてもらえば、わたくし、
「ヘソから下にこそ人格はある」
と信じている。
言っちゃナンなんだが、性についてのありようが、よくもわるくも、そのひとの人生をあらわしているのではなかろうか? 性に対してイイ加減なひとは、生きることにもイイ加減なひとにちがいない。
そんなわけで、
「据え膳食わぬは男の恥」
ということわざが嫌いだ。このことわざ、
「女のほうから持ちかけてきた情事に応じないのは、男らしくない。意気地なしだ」
といった意味のようだが、男らしくなくたって、意気地なしだって、わたくし、いっこうに構わない。
ときに「女のあたしにそこまで言わせるの」とか「女のあたしに恥をかかせるの」とか言われたこともないわけじゃないが、そのたびごとに「間に合ってますから」と申しあげてきた。
ホント、たとえウソでも、それくらいのことは言ってみたいものだ。そうして、心の内でつぶやく言葉は、
「据え膳食うは男の恥」