「背に腹は代えられぬ」
というのは、
「切羽詰まったときの形容だ」
とばかり思っていた。もちろん、切羽詰まったときの形容ではあるけれど、
「さしせまったことのためには、他を顧みるゆとりがない」
というのが、本来の意味のようだ。
背中と腹を比べれば、臓モツが詰まっているだけ、腹のほうが大事らしいのである。わたくし個人と致しましては、
「子は、父親の背中をみて育つ」
というくらいのもんだから、背中のほうが大事だとばかり思っていたのだが……。
だいたい、このことわざ、
「背に腹は代えられぬ」
と言うから、わかりにくいのである。ちょいとひっくり返して、
「腹は、背に代えられぬ」
と言えば、すぐにわかるではないか。いざとなれば、腹をかばって背を差しだす覚悟である。
ひどく腹がへったときなどは、
「腹の皮が背中につくようだ」
と表現することもある。いくら大事な腹でも、背中にくっつくような腹では、やはり、背中も泣きたくなるだろう。
これが「背《せな》で泣いてる唐獅子牡丹」だナンテ、もちろん、冗談です。