飲めばオノレの不遇を嘆くことになる。サラリーマンの酒は、いつも悲しい。
だいたいが、適材適所でないことに対する怒りである。脇で聞いていると、この世は、実に才能ある人間に満ちていて、しかも、それがうまく使われていないみたいだ。
「見る目がない」
と言うべきか、
「見られる芽[#「芽」に傍点]がない」
と言うべきかは知らないが、ホントにモッタイナイことである。会社の人事は、すべからくナワノレンでやったら、どうだろう?
酔って「課長は無能だ」と怒鳴る奴がいる。すると、それに同調する奴がいる。いっせいに「そうだ、そうだ」と言っている。
脇で聞いているうちに、
「課長というのは、無能でなければつとまらないのかなあ」
と思えてくる。有能な[#「有能な」に傍点]人物は、なぜか、みんな、こうして飲んだくれている。
「宝の持ち腐れ」
ということわざは、
「役に立つものを持っているのに利用しないこと」
といった意味である。わが社なんか、まさにその典型ではあるまいか。
もちろん、飲んでオダをあげている連中の言うことがホントならば——の話だ。それがホントかどうかは、わたしにはわからない。