「すもももももももものうち」(李も桃も桃のうち)
という。言葉遊びのなかの重ね歌(畳語歌)である。ご同類に、
「月々に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月」
「瓜売りが瓜売りにきて瓜売れず 売り売り帰る瓜売りの声」
というのがある。
「たらしがたらしにたらされる」
という言葉も、この重ね歌の一つに数えられるかもしれないが、レッキとしたことわざである。この場合の「たらし」は漢字で書けば「蕩らし」だろう。
よく「女蕩らし」「男蕩らし」と言うではないか。それと同じように「人っ蕩らし」というのもあっていいように思う。相手が男であると、女であるとを問わず、他人を自家薬籠中のものにする。人徳である。
そういうひとには、はじめっから「相手をだまそう」なんてケチな了見はないにちがいない。かりに、そんな了見がチラッとでもみえようものなら、わたしたちは本能的に警戒するか、パタッと心を閉じてしまう。
だいたいが、相手をだまそうとする人間は、欲の皮かナンかが突っ張っていて、どうしたって隙《すき》ができる。その隙を突かれ、
「逆に、相手にだまされる」
ということもありうるのだ。