「時は金なり」
ということわざの「時」は「疾《と》き」ではないか——といった説がある。あの「疾きこと風の如し」の「疾き」である。
されば、
「時は金なり」
ということわざは、
「疾きは金なり」
ということになって、おカネの逃げ足の早さを説明しているわけである。ホント、あいつら、いまフトコロに入ったと思ったら、あっというまに出ていってしまう。
それで「時は金なり」を英語で言うと「タイム イズ モウネェ」と言うんだな——というのは、あまりにもヘタなシャレだろう。
おカネは、有っても邪魔なものでは、けっしてない。そんなにたくさんは要らないけれど、少しは有ったほうがいい。
チャールズ・チャップリンの映画『ライム・ライト』のなかでも、貧しくて自殺を図ったバレリーナ志願の少女に、チャップリン扮する老芸人が、
「人生で必要なものは、勇気と想像力と、それからホンの少しのお金だ」
と言うではないか。それも、わがチャップリンは、ちょっぴり怒ったような口調で言うのである。
勇気と想像力に、カネはかからない。でも、少しのお金には、カネがかかりそうだ。