「毒食わば皿まで」
ということわざは、
「毒食わば皿まで食え」
ということの略ではない。いくらナンでも皿は食えない。
これは、
「毒食わば皿までねぶれ」
ということの略である。いったん毒を食べたからには、
「その毒のついた皿までなめまわせ」
といった意味である。なんだか化けネコが舌なめずりしているみたいで、気色わるい。
「どうせ悪事を働いた以上は、やぶれかぶれだ。徹底的に悪事を働いてやれ」
という意味にもとれるし、
「やりかけたことは最後までやらなきゃ駄目じゃないか」
といった意味にもとれる。
「毒を以て毒を制す」
その毒を殺すには、それより強い毒を使うのも一つの方法だろう。悪を倒すに、悪を用いることのたとえだ。
シェイクスピアの『リチャード二世』に、
「毒を必要とするものも毒を愛しはせぬ」
というセリフが出てくる。のちのヘンリー王のために、リチャード二世を殺してきた家来のエクストンに向かって、ヘンリーが言うセリフである。やはり、毒食わば皿までねぶらねばなるまいか。