「実年」
と言うんだそうな。厚生省が音頭をとって決めた五十代、六十代の呼称である。とっさに、
※[#歌記号、unicode303d]あれは 虚年[#「虚年」に傍点]のことだった
という文句が思い浮かんだから、世話はない。わたしも、古いね。
「熟年」
というのは、たしかに熟柿に似て、落ちる寸前みたいだから、イヤがる気持ちはわかる。が、実年というのも、どうか。
「いっそのこと�定年�でいいじゃないか」
と言ったのは、定年直前のサラリーマンである。トーゼンのことながら窓際族だ。
素直に、
「老年」
と言いたい。老年の「老」は、老酒の「老」で、ちょっぴり尊敬の念もこもっている。
俗に、
「成人病」
という。高血圧、心臓病、ガンなど、あれは、あきらかに老人病である。
しかし、
「老人病」
と呼ぶのは、いかにも曲がないので「成人病」とした。これも、厚生省あたりの知恵か。
されば、
「成人向き映画」
というのは、ホントは老人向き映画?
こういうのを「年寄りの冷や水」と申します。