「七転び八起き」
ということわざは、
「七たび転びて八たび起きよ」
とも言う。七度転んで八度起きることだ。
「だから、結局は起きるのだ」
と教わったが、待て、しばし。どう考えても、計算が合わない。七回転んだのなら七回起きれば、それでいいではないか。
金子武雄さんの『日本のことわざ』によると、
〈「七」は例の通り、別に必然的な定数ではないが、この場合、多からず少なからず適度な数である。「八」はそれより一つだけ多いところに意義がある〉
ということだ。なんだか「一つだけ」なんてケチくさいような気もするが、要は、
「何度失敗しても、挫《くじ》けずに立ちあがれ」
という意味である。
それにしても、七難八苦、七転八倒、七縦八横、狐七化け狸は八化け、七細工八貧乏、七重の膝を八重に折る……といったふうに、この国のことわざは、なぜか「七」と「八」がセットだ。ホント、都々逸にも、
※[#歌記号、unicode303d]七つ八つからイロハを習い
イの字忘れてロハばかり
というのがある。
もっとも、これ、忘れたのがイの字だからいいが、
※[#歌記号、unicode303d]ハの字忘れてイロばかり
というんじゃあ……。