明治生まれの父親は、子供たちを叱るのに、
「この薄バカ!」
と言って、叱ったものだ。こっちは、叱られるたびに、腹の中で「醤油じゃあるまいし、バカに�薄くち�も�濃いくち�もあるもんか」と呟いてきたけれど、濃いバカと薄バカを比べると、なんだか薄バカのほうが濃いバカよりバカに思えたから、不思議である。
「馬鹿と鋏は使いよう」
というのも、父親の口癖の一つだった。このことわざは、
「ハサミは使い方によって切れたり切れなかったりする。愚かな者でも使い方によっては役に立つ」
といった意味だが、わたしの父親は、これを自分の子供に向かって言うのである。父親にしてみれば、
「もっと頭を使え」
という意味で使っていたのかもわからない。
正直な話、人間なんて使い方ひとつで、どうにでもなる。人を使う場合は、ホントに使い方の上手下手がモノを言う。
これを逆に言うなら、人間なんて、使われ方ひとつで、どうにでもなるのである。どうせ使われるなら、気持ちよく使われたい。
「給料さえ払えば、それで文句はなかろう」
という使い方では、サラリーマンも、給料だけのことしかやらないだろう。給料以上のことをやらせたかったら、使い方を考えよ。