うっかり、
「バカ!」
と言ったら、
「差別用語だ」
と叱られた。失礼ながら、こういう奴は、女のひとから、
「イヤーン、バカ!」
と言われたことがないのだろう。考えてみれば、可哀そうみたいなもんだ。
「バカ」は果たして差別用語か、どうか?
もし「バカ」が差別用語なら、わたしたちは、これから、たとえば森の石松さんみたいな人のことを、
「知能の発展途上の人」
と呼ばなければならぬ。ホント、バカバカしいことである。
「馬鹿は死ななきゃなおらない」
ということわざが人口に膾炙《かいしや》したのは、ひとえに浪曲師・広沢虎造さんのおかげだ。わたしも、ちいさいときからナニワブシを聴いて育った。
「江戸っ子だってねぇ」
「神田の生まれよ」
じつに、いい調子だった。
「馬鹿につける薬はない」
ということわざも、似たような意味だ。かりに、バカが自分のことを「バカだ」と気づいたら、彼はバカじゃない。つける薬は、いくらでもありそうな気がするが、どうだろう?