「ダンゴムシ」
というんだそうな。甲殻類等脚目ダンゴムシ科の虫である。
長さは一センチくらい、灰色ないしは暗褐色で足が多く、枯れ葉や朽ち木などの下に生息している。こいつにちょっと触ると、からだを曲げて黒豆のような玉になり、転がせば、ころころと転がる。しばらく放っておくと、背伸びでもするように玉が解けて這い出す。
そのダンゴムシが転がっているのを見て、
「豆だ」
「虫だ」
と、大の男が言い争っている。やがてノソノソ動き出したので「そら見たことか。やっぱり虫じゃないか」と言ったが「いいや、豆だ」と譲らない。彼に言わせると「たとえ這ってたところで、豆は豆だ」というのである。
言っちゃナンだが、強情もここまでくれば芸だろう。浮気の現場をみつかっても「いいえ、一つオフトンに入って、お話をしていただけなの」と言い張るようなもんだ。
それで、思い出した。
ある女性にインタビューして記事を書いたところ、
「あんなこと喋った覚えはない」
と抗議され、
「テープに入っていますが……」
と答えたら「テープに入っていても、あたしは喋っていないのよ」と叱られたことがある。