サラリーマン時代のことだ。みんなで飲むと「この場は任せておけ」と言う先輩がいた。
すっかりゴチソウになったつもりでいたら、表に出たとたん「さあ、割り勘だ」と、飲んだぶんだけ払わされた。
奴《やつこ》さん、飲み屋の女将に気があって、ちょっとばかりイイ顔をしたかったのだろう。
こういうのを、
「人の褌で相撲をとる」
と言う。言っちゃナンだが、あんまり好かれない。
相撲をとるのに、フンドシはなくてはならない。自分で持っていないなら、相撲などとらなければいいものを、他人のものを使ってとるのである。
フンドシなんか、貸したところで減るもんじゃない。だから、貸したって構わないようなものだけれど、なんか汚い気がして、イヤだ。それを「貸せ」と言う。なんとなく断りにくいこともまた、不愉快な感じをいっそう強くする。
こういうことは、女のひとにもあるのだろうか? 女のひとの場合は、なんと言うんだろう? やっぱり「人の褌で」と言うんだろうか?
「女のフンドシ」
とくれば、
「食い込むばっかり」
と答える。うーん、何の話?