「ツノ突きあうのも、つきあいのうちだ」
と思っている。夫婦も、夫婦ゲンカ一つやらないようになったらオシマイである。
「思う仲の夫婦げんか」
といって、仲のよい夫婦は、かえってケンカをするようだ。相手のことを思えばこそ、つい要らざる口出しもしたくなるのだろう。
亭主にとって、女房の口出しでいちばんシャクにさわるのは、友人のことをとやかく言われることだ。男には、悪友もまた必要なのである。
女房にとって、亭主の口出しでいちばん腹が立つのは、実家のことをあれこれ言われることだろう。なんだか自分の人格まで否定されたような気分になるらしい。
おたがいに、そんなつもりで言っているわけじゃない。そんなつもりで言っているわけじゃないことはわかっているのだが、それでもなおカチンとくるところが、夫婦、いや、人間だ。
もともとは、好いて好かれて一緒になった仲である。昼間は口汚く言い争っていても、北風が夕方になると収まってしまうように、夜になると不思議に仲直りしてしまう。ホントにイヤらしいったらありゃしない。
それも、夫婦だから許されることだろう。これが、夫婦じゃなかったら、いや、たとえ夫婦であっても夜の生活がなかったら……。
なんだか、わたくし、寒気がしてきた。