小説家の吉川英治さんに、
「朝の来ない夜はない」
という言葉がある。どんなに暗い夜でも、やがては明るい朝になる。
そのことから、
「夜が暗ければ暗いほど、朝は明るい」
ということもできるだろう。人間、夜の暗いことを嘆いているだけでは、どうにもならぬ。
評論家の扇谷正造先生は、この言葉のアタマに「君よ」とつけ、
「君よ、朝の来ない夜はない」
と、励ましの言葉にした。若い人たちに対する呼びかけである。
「冬来たりなば春遠からじ」
ということわざも、
「冬が来れば、やがて春になる」
といった意味である。春になれば、しかし、やがて夏が来るだろうし、夏になれば間もなく秋が来て、秋になれば、もう冬だ。ホント、月日がたつのは早い。
——というのは、もちろん、冗談だ。こんなことマトモに考えていた日にゃ、夜もロクに眠れない。
それにしても、
「雪がとけたら、何になる?」
という謎々が好きだ。雪がとけたら、水ではなくて、春になるのである。
そうして、オビがとけたら女になる——というのは、うん、あんまり面白くないね。