いっぽうで、
「好きこそものの上手なれ」
と言うかと思えば、もういっぽうでは、
「下手の横好き」
と言う。マジメな話「いったい、どっちなんだ?」と言いたくなるが、そういうときには、
「言わぬが花」
と逃げる。まことに、ことわざというものは都合がいい。
ついでに、ここで、
「言わねば腹ふくる」
と言うのは、言うだけ野暮だ。それなら、
「言わぬは言うにまさる」
ということわざだってあるのである。
「好きこそものの上手なれ」
ということわざと、
「下手の横好き」
ということわざを比べたら、わたしは「下手の横好き」のほうが人間らしくて、好きだ。なんだか「好きこそものの上手なれ」には教訓めいた感じがあって、ウサンくさい。
「下手の横好きだ」
と思えば、カラオケバーにおける同僚の狂態も許せる。あいつら、調子っ外れで歌っているから、ご愛嬌なのである。
失礼ながら、オタマジャクシの通り歌うんなら、プロの歌手だって歌える。アマチュアの本領は、けっしてオタマジャクシの通りには歌わないところにあるとも思うが、どう?