「もう半分しか残っていない」
と考えるのも人間なら、
「まだ半分も残っている」
と考えるのも、同じ人間である。できることなら、後者でありたい。
年齢についても「わたしは、もう五十歳だ」というふうに考えるのと「わたしは、まだ五十歳だ」というふうに考えるのとでは、生きる姿勢にずいぶんちがいが出てくるだろう。かくいうわたしは、まだ三十歳を過ぎたばかりだ。うん、二十七、八年前に、ね。
妻が夫について、
「ホントにやんなっちゃう。うちの亭主ったら、いつまでも若いつもりでいるんだから……」
と嘆いているのを聞くたびに「けっこうなことではないか」と反発してきた。ホント、どうして世の妻たちは自分の夫を早く老けさせようとするのだろう? なに、早く未亡人になりたいから……だって!
そこで、
「まだ[#「まだ」に傍点]はもう[#「もう」に傍点]なり もう[#「もう」に傍点]はまだ[#「まだ」に傍点]なり」
というのも、ことわざに入れることにした。まだ[#「まだ」に傍点]も、もう[#「もう」に傍点]も、気の持ちよう一つだ。
しかし、いくらまだ[#「まだ」に傍点]がもう[#「もう」に傍点]で、もう[#「もう」に傍点]がまだ[#「まだ」に傍点]だから——とはいえ、相撲の行司が、
「見合って、見合って! もうよ、もうもう」
と言うのは、いくらナンでもまずかろう。
と考えるのも人間なら、
「まだ半分も残っている」
と考えるのも、同じ人間である。できることなら、後者でありたい。
年齢についても「わたしは、もう五十歳だ」というふうに考えるのと「わたしは、まだ五十歳だ」というふうに考えるのとでは、生きる姿勢にずいぶんちがいが出てくるだろう。かくいうわたしは、まだ三十歳を過ぎたばかりだ。うん、二十七、八年前に、ね。
妻が夫について、
「ホントにやんなっちゃう。うちの亭主ったら、いつまでも若いつもりでいるんだから……」
と嘆いているのを聞くたびに「けっこうなことではないか」と反発してきた。ホント、どうして世の妻たちは自分の夫を早く老けさせようとするのだろう? なに、早く未亡人になりたいから……だって!
そこで、
「まだ[#「まだ」に傍点]はもう[#「もう」に傍点]なり もう[#「もう」に傍点]はまだ[#「まだ」に傍点]なり」
というのも、ことわざに入れることにした。まだ[#「まだ」に傍点]も、もう[#「もう」に傍点]も、気の持ちよう一つだ。
しかし、いくらまだ[#「まだ」に傍点]がもう[#「もう」に傍点]で、もう[#「もう」に傍点]がまだ[#「まだ」に傍点]だから——とはいえ、相撲の行司が、
「見合って、見合って! もうよ、もうもう」
と言うのは、いくらナンでもまずかろう。