「なぜ結婚しないんですか?」
と質問して、
「してしまったことならイザ知らず、しないことに理由などあるもんか」
と叱られたことがある。そう言って叱ったのは、画家の岡本太郎さんである。
「ナルホド、理屈だ」
と感心していると、
「万引きだって、ナンだって、したら理由を訊かれる。しないのに、理由を訊かれるか!」
と目を剥いた。太郎さんにかかっちゃ、結婚も万引きも、次元は同じだ。
そういえば、結婚と万引きは似ていないこともない。わたしは、太郎さんに、
「きみこそ結婚しているんだろ? なぜ結婚したんだ?」
と問いつめられ、
「ついデキゴコロで」
と答えちゃった。なんだか申しわけないようなことをしたような気分で、
「もう、二度と致しません」
言っちゃナンだが、結婚なんて、いちいち考えていたら、できっこない。あんなもん、もののはずみでもなけりゃ、ホント、バカバカしくって……。
ま、若気の至りみたいなもんですね。ことわざの「物ははずみ」には「案ずるより産むが易い」といった意味もある。ついでに「思いがけないような大事になる」という意味も。