「ここでナニガシかのカネをはずめば、もうちょっとマシなものが、買える」
ということは、わたしにもわかっているのである。が、実際には、この�ナニガシかのカネ�が問題だ。
かりに、その�ナニガシかのカネ�が三千円なら三千円とする。それも、十万円なら十万円を使い果たしたうえでの三千円である。
「あと三千円出してくだされば、お譲りしましょう」
店の人に言われても、オイソレと出すわけにはいかない。涙をのんで一ランク下の品を買い求める。結果は、やはり失敗だった。
あと三千円出せば一年はもつものが買えたのに、わたしが三千円を惜しんで買ってきたものは半年でこわれてしまった。
——というような経験は、誰にでもあるにちがいない。こういうとき、わたしたちは、
「安物買いの銭失い」
と呟いて、みずからを慰める。
それにしてもわからないのは、ある種の主婦たちの買いものの仕方だ。新聞のチラシかナンかで果物なら果物の「バーゲンセール」をやっている店をみつけると、高いタクシー代を払って、駆けつける。
揚げ句に同じものを二つも買い込んできて、
「安い、安い」
と喜んでいる。そうして、一つは腐らせて捨ててしまうのだ。