俗に、
「鬼のようだ」
という。無慈悲なことのたとえだ。
桃太郎の昔から鬼は恐ろしく、悪い者の代表だが、ホントに鬼はそんなに悪者だろうか?
器量が悪いことは悪いが、あれで、よくみれば愛嬌のある顔である。
来年のことを言うと、その鬼が笑う。おそらくは泣いたような顔で、
「そんなことがわかるものか」
と笑うのだろう。この笑いは、せせら笑いだな。あんまり好きな笑いじゃない。
歳も押し詰まってきて、
「ことしは、あれもやり残した。これもやり残した」
と、過去形で考える。これが、
「来年になったら、あれもやりたい[#「たい」に傍点]。これもやりたい[#「たい」に傍点]」
というふうに希望をあらわす助動詞に変わるのは、アッという間だ。
「来年の事」
というから、ずーっと先のことかと思っていたら、すぐ先のことだ。が、来年になってしまえば、来年の来年は、またずーっと先のことになる。
こんなバカなことばかり考えているから、鬼に笑われるのだろう。このことわざは「烏が笑う」とも言うが、カラスは、もちろん「アホウ、アホウ」と笑うのである。