たぶん、
「紅一点」
というのをもじったつもりなのだろうが「黒一点」と言うひとがいる。男性一人が大勢の女性に囲まれたときの形容である。
たとえば、このわたしをからかう際に使う。
私事で恐縮だが、わが家は子供が三人いて、長女も次女も三女も女だ。ついでに女房も女だから、
「すると、きみの家にあっては�黒一点�なんだな」
というふうに言う。
しかし、これは、おかしい。もともと「紅一点」というのは、王安石の『石榴詩』に、
「万緑叢中紅一点」
とあったことから言われはじめたのだから、正しくは「黒一点」ではなくて「緑一点」と言うべきだろう。
それにしても、不思議だ。女性一人が大勢の男性に囲まれても生き生きしているのに、男性一人が大勢の女性に囲まれると、なぜかコチコチになって身動きがとれない。それだけ男性のほうが繊細なのだろうか? それとも、女性のほうが図々しいのか?
「両手に花」
ということわざは、それにもかかわらず、そんな男性が左右に女性を抱えてヤニさがっている図である。ま、花は花でも、ドライフラワーだったりして……。