錠剤だった薬を顆粒《かりゆう》にしたら、かえって飲みにくくなった。水と一緒に飲み込もうとしても、ノドや舌の裏にくっついてしまう。
常識では、錠剤より顆粒、顆粒よりは粉末のほうが飲みやすそうだが、これが飲みづらい。薬を作る側にすれば、意外なことかもわからない。
これでは「薬づくりの薬知らず」ではないのか。薬は、やはり飲む側に立ってつくってもらいたい。
「良薬は口に苦し」
ということわざは、
「良い薬は苦くて飲みにくいが、病気のためには効きめがある」
と、昔は考えられていたことから、忠言、諫言《かんげん》は耳にして快いものではないけれど、その身のためになることにも臂《たと》えて言う。いま、おおかたの薬は砂糖でコーティングされているから、そんなに苦くはないが、このことわざは、他人に忠告するときによく使われる。
それにしても、
「良薬は苦い」
という考えが「苦いからこそ良薬だ」という考えに変わっていくのも、ことわざならではのことか? わたしたちは、ともすれば「過激な忠告をしてくれる人間のほうが、良い友達だ」なんて思いがちだ。
それにつけ込んで言いたい放題のことを言う奴もいる。くれぐれも注意したい。