「憎い相手を氷で殴り殺す」
というミステリーがあった。死体が発見され、刑事が現場に駆けつけたときには、凶器に使った氷は溶けてしまっており、
「証拠がない!」
というのである。
「論より証拠」
ということわざは、
「物事は、議論するより証拠によって明らかになる」
ということだ。いろいろ言いくるめようとしたところで、証拠がなければどうにもならぬ。
夫婦の間の「浮気したろう」「いや、していない」といった言い争いも、ホテルのマッチかナニか突きつけられ「これが証拠だ!」と言われれば「恐れ入りました」と、平伏せざるをえない。が、よく考えてみれば、ポケットにホテルのマッチが入っていたから——といって、そこに浮気の相手と泊まった証拠になるとは限らない。
そんなマッチ、誰かにもらったものかも知れないではないか。
「パンダのシッポは黒いか、白いか?」
という論争に、パンダのぬいぐるみを証拠として持ち出してきても、ダメだ。そういうときは、実際に動物園へ行って、自分の目で確かめることが肝心である。
パンダのぬいぐるみのシッポは、なぜか黒い。パンダのホンモノのシッポは白いのに。