ちかごろ、なにかというと傷つく人が多い。
こっちは、相手を傷つけるつもりで言ったわけではないのに、勝手に傷ついている。
なにげなしに、
「ご結婚は?」
と訊いて、
「失礼ね」
と恨まれたことがある。彼女に言わせると、
「どうせ婚期が遅れているのをからかっているんでしょ?」
ということだ。
てて「そんなつもりじゃない」と説明したが、いったん損ねた機嫌は、ついに直らなかった。人生、これで儘《まま》ならぬものだ。
つかこうへいさんに『傷つくことだけ上手になって』(角川書店刊)というエッセイ集があるが、ホント、みなさん、傷つくことが上手になっているような気がする。ときに、柄のないところに柄をすげてまで、傷ついている。
しかし、こっちが「相手を傷つけるつもりで言ったわけではないから」といって、シレッとしているのも、どんなものだろう? いくらこっちが傷つけるつもりでなくても、相手が傷つくような話題を選んだことは、ひょっとしたら、こっちの落ち度ではなかろうか?
「我が身をつねって人の痛さを知れ」
ということわざもある。相手の苦痛に気づかないのは、やはり、こっちに相手を思いやる心が足りないのかも知れぬ。