「何が好き?」
と訊いたら、
「なんでも!」
と答えた。横浜で「さて、これから飯でも食おうか」という話になったときのことである。もちろん、相手は女のひとだ。
そこで、中華街へ連れてった。馴染みの店に案内し、
「適当にみつくろってくれ」
精々顔を利かせたつもりなのに、いざ料理が運ばれてきたら、ちっとも箸をつけない。だんだん気になってきて、
「どうしたの?」
と尋ねると、
「あたし、中華料理、ダメなんです」
という返事だ。
「それならそうと、最初から言え!」
つい声を荒げたところ、
「だって、初めにそんなこと言ったら、失礼だし、あなたが傷つくと思って……」
冗談じゃない。頼んだ料理に箸をつけてくれないことのほうが、よっぽど傷つく。
言っちゃナンだが、これだから、わたし、知らない女のひとにゴチソウするのが、イヤなのだ。せっかくの料理も、まずくなる。