われながら、
「ヌケテルなあ」
と思う。四百字三枚のつもりで原稿を書きはじめ、書き終え、
「さて、投函しよう」
と、改めて依頼書を眺めると、
「原稿枚数——六百字程度」
と認《したた》めてあるではないか。
自慢じゃないが、倍近くも書いてしまったのである。いまさら削るわけにもいかない。
言っちゃナンだが、四百字三枚の文章には四百字三枚にふさわしい内容があり、六百字程度の文章には六百字程度の内容がある。そのへんを見極めてから書き出すのが、ホントのプロだろう。
それなのに、
「約束の字数をまちがえてしまった」
というんでは、どうにもならない。自分で言うのもナンだが、プロ以前だ。
アマチュアの場合、六百字ぐらいの原稿を書くつもりだったら、まあ、八百字ぐらい書くつもりで書きはじめればいい。八百字ぐらい書きたいことを書いて、二百字ぶん削るのである。
プロの場合は、かならずしも書きたいことがあって書くわけではない。まず注文を受け、それから書きたいことを捜す。そこが、アマチュアとちがう。そうして、
「もう、オレには書きたいことなんて、ほとんどない」
とボヤキながら、こんな文章を書いている。