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男のためいき女の寝息54

时间: 2020-02-07    进入日语论坛
核心提示:トコロデ会ヒタイヒトモナクウチヲデテミリヤアテドモナイガ正月キブンガドコニモミエタトコロガ会ヒタイヒトモナクアサガヤアタ
(单词翻译:双击或拖选)
トコロデ会ヒタイヒトモナク

ウチヲデテミリヤアテドモナイガ
正月キブンガドコニモミエタ
トコロガ会ヒタイヒトモナク
アサガヤアタリデオホザケノンダ
 ——学生時代に、井伏鱒二さんの『厄除け詩集』(木馬社)を読んでいて、みつけた。井伏さんが高適(李白?)の「田家春望」を訳したものである。
自慢じゃないが、あのころは、まったく飲めなかった。三十年後のいまでもそんなに飲めるわけじゃないが、人恋しくなると、無性に呷《あお》るクセがある。
われながら「アホだな」と思うのは、
「アルコールが人恋しいと思う気持ちを殺してくれる」
と信じていることだ。要するに、バカだから、
「飲んで飲んで飲みまくれば、そっちのほうの気力は失せてくれるだろう」
と思っている。
そんなに沢山の別れを経験してきたわけではない。そんなに沢山の恋にぶつかったわけでもないからだ。
幼いときからヘンに気位ばかり高かったので、うっかり「好きだ」と口走って、相手に「だけど、あたしは嫌いよ」と軽くあしらわれるのが恐ろしくて、滅多に「好きだ」と言ったことがない。先輩のなかには、
「バカだな。そういうのは�気位が高い�とは言わないんだ」
と嗤《わら》う人もいるけれど、そんなことは百も承知である。
しかし、ものごころついた頃から、
「オマエは、器量がわるいんだから……」
と言われつづけてきた人間にとって、よかれ悪しかれ、
「オレは、気位が高いんだ」
と思うことは、せめてもの心の拠り所ではないか。ここは、どうしたって「ヘンに気位ばかり高かったので」と言いたいところだ。かりに、
「好きだよ」
と言う。すると、相手が、
「でも、このまま�いいお友だち�でいましょうよ」
と答える。失礼ながら、それで、ずっと�いいお友だち�でいられたことがあるか! 言っちゃナンだが、ないだろう。
ところが、困ったことに、このわたしにはそれ[#「それ」に傍点]があるんですね。自分で言うのもナンだけど、ホントウにヤワな性質である。
そのたびに酒の量が多くなり、だから、わたしは、いつでも飲んでいる。わたしの若い友人に言わせると、このわたしは、アルコール中毒でこそないけれど�ほとんどアル中�なんだそうだ。飲めば、女のひとが綺麗にみえてくる。飲みすぎると、女のひとなんか、どうでもよくなってしまう。
俗に、
「虚実皮膜の間」
というけれど、わたくしにとって「虚実皮膜の間」とは、そういう状態のときである。杯を手に、女のひとを前に、そういう状態でたゆたっているときが、わたくし、いちばん幸せだ。
やがて、
「サ・ヨ・ナ・ラ」
と呟く時間である。女のひとたちに別れを告げて、わたしは、ひとりくちずさむ。
「トコロデ会ヒタイヒトモナク」
井伏さんの訳では、ここは「トコロガ会ヒタイヒトモナク」となっているはずである。それなのに、わたしがくちずさんでいるのは「トコロデ会ヒタイヒトモナク」だ。
いったい、いつ、まちがえて覚えちゃったんだろう? そうして、なぜなんだろう?
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