中国では、
「|※[#「兵」の下部「ハ」の右側を欠いたもの]※[#「兵」の下部「ハ」の左側を欠いたもの]球《ピンパーン》」
と書くそうな。いかにも、ピンポンといった感じである。
されば、こちらは、由緒ただしく、
「テーブルテニス」
と呼ばせてもらおうか。知らなかったが、
「ピンポン」
というのは、もともとは、アメリカはパーカー商会の商標名だったらしい。
テーブルテニスの歴史は、これで、けっこう謎《なぞ》に包まれていて、その起源も、発生地も、まったく知られていない。発祥の地は、一説には、イギリスとも、アメリカとも、インドとも、南アフリカともいわれている。
モノの本によると、イギリスのバッキンガム宮殿の中にはピンポン台があって、
「ジョージ六世が、このゲームを家族と楽しんでいた」
ということだが、そういうことなら、
「ペルシャのシャーも、インドのネルーも、エジプトのファルークも、みんなピンポンのファンだった」
という記録がある。中国の毛さんだって、もちろんファンだったにちがいない。
いまみたいに、セルロイドの球が使われるようになったのも、つい最近のようだ。ヴィクトリア時代のイギリスの家庭では、コルクやゴムの球を使っていた——と聞く。ラケットも、厚いボール紙かなんかで作っていたのではなかろうか?
——一九五六年、世界卓球選手権でのこと。イギリスのリチャード・バーグマンは、使われている球のことを、
「軟らかすぎる」
と言い出し、
「ホントウに丸くない」
と、イチャモンをつけた。
その挙句《あげく》、彼は、試合を中断させ、ナットクのいくボールを選びはじめたが、
「これで、いい」
という球をみつけるのに、三十分かけ、なんと百九十二球も調べたのである。
いまにして思う。オレ、カミさんを選ぶとき、こんなに慎重だったかなァ——と。