チェロもそうだが、ヴァイオリンがうまく弾けるようになりたいと思ったら、
「なにはともあれ、素敵な恋人を持つことだ」
という説があるそうな。作曲家の芥川也寸志《あくたがわやすし》さんが紹介していた説だけれど、
「楽器を恋人のように抱け。そして、愛撫《あいぶ》しろ。恋人を愛撫するように、楽器を弾け。それが、上達の最短距離だ」
というのである。
すなわち——
「楽器を抱くほうの左手は、しっかりと力強く、弓を持つ右手のほうは、ソフトに、そして、いつでもどこへでも運動可能な敏感さを備えていなければいけない」
ということか? これで、音楽を嗜《たしな》むのも、けっしてラクなことじゃない。
しかし、そういえば、ヴァイオリンにしろ、チェロにしろ、絃楽器というやつは、なんとなく女のひとの体に似ている。ホント、手足こそないけれど、ふっくらとしたバスト、きゅっとくびれたウエスト、そうして豊かにふくらんだヒップ……と、まさに理想のプロポーションだ。
ついでに言っちゃうと、
八二センチ
五六センチ
八五センチ
というのが関根恵子嬢のサイズで、
八四センチ
五九センチ
八四センチ
というのが烏丸せつこ嬢のサイズである。言っちゃナンだが「どっちがヴァイオリンで、どっちがチェロか?」というほどのこともない。
それにしても、ヴァイオリンに比べて、
「チェロは名器が少ない」
というのは、誰が言い出したことだろう? まさか、パブロ・カザルスじゃあるまいな?
「チェロ」
というと、宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』を思い出す。カッコウを相手に、
「このばか鳥め。出て行かんとむしって朝飯に食ってしまうぞ」
と怒鳴ったゴーシュも、ひょっとしたら�名器�には巡り合えなかったのかも知れん。