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男の日曜日47

时间: 2020-02-07    进入日语论坛
核心提示:図らざる好意新聞記者をやっていたときのことだ。いまは亡き松坂良光君に慕われて、あっちこっち連れて歩いたことがある。ご存じ
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図らざる好意

——新聞記者をやっていたときのことだ。いまは亡き松坂良光君に慕われて、あっちこっち連れて歩いたことがある。
ご存じかどうか、松坂君は、松果腺《しようかせん》ホルモン異常の、
「巨人症」
という病気にかかって、身長が二メートル三〇センチにも伸びてしまった人である。東大の清水健太郎先生の手術で、ようやく成長がストップした。
その松坂君が、
「相撲が見たい」
というので、東京は蔵前の国技館(当時)に案内した。そのころは、いまの大鵬《たいほう》親方が新入幕で、破竹の七連勝をつづけていたが、偶々《たまたま》当日の対戦相手が休場して、不戦勝が決まっていた。
二所ノ関部屋を訪ねると、
「ボクが案内しましょう」
と、あの大鵬が先に立って歩いてくれたのだ。おかげで、松坂君は大喜びである。
のちに横綱になった故・玉の海なぞは、まだ幕下で、大鵬のあとを尾《つ》いて歩く長身の松坂君をみつけて、
「おや、新弟子かい」
と、心やすく声をかけたりしたものだ。松坂君は、成長は止まったものの、まだ肉がついていなくて、とても相撲なんかとれる体ではなかった。
帰りしな、玄関に脱いであった松坂君の靴をみつけて、送ってきた大鵬が驚いた。なにしろ、松坂君の靴は全長が三五センチもあったのである。
大内山だか誰だかの靴も大きくて、
「なかで、ネコが子を産んでいた」
という伝説があるくらいだが、松坂君の靴はそれよりもデッかい。さしもの大鵬も呆《あき》れて、
「フーン」
と、靴を手にとって眺めた。
それから、それを揃《そろ》えて松坂君の前に置いたから、こんどは松坂君が感激した。松坂君は、たぶん大鵬が興味半分に松坂君の靴を拾い上げたことには気がつかず、帰りのクルマの中で、大鵬のことを、
「なんて礼儀正しいお相撲さんだろう」
と感嘆しきりだ。挙句《あげく》の果てに、
「あの人は、将来、きっと横綱になる」
と、たいへんな持ちあげようだった。松坂君の予言どおり、大鵬が横綱になったことは言うまでもない。
——編集者をやっていたときのことだ。イラストの原稿をもらいに、部下の女性記者を真鍋博《まなべひろし》さんのところへやったことがある。
ご存じかどうか、真鍋さんは、あんまりひとづきあいがよくなくて、
「誰か、使いに行け」
というと、たいがいの者が尻込みをする。なんとなくケムッタいらしいのである。
ところが、彼女だけは、喜んで出かける。おまけに、真鍋さんからひどく可愛がられ、真鍋さんは、彼女が会社をやめたのちのちも、
「彼女、いまどうしているだろう?」
とウワサしたものだ。
真鍋さんが彼女のことを気に入ったのは、ホカでもない。彼のところに原稿をとりに行くお使いさんのなかで、彼女だけが封筒に入っている原稿を、
「拝見します」
といって、いちいち確かめていたからだ。
「ヨソの社の人間は、そんなことしないよ。ホントに感心だ。あなたは、若い社員たちをどのように教育しているのかね?」
いつだったか、真鍋さんに会ったとき、彼にそう言われて、わたしは、大いに面目を施した。わたしは、べつに部下たちを特別に鍛えたわけじゃないけれど、彼女のおかげで、こっちまで信頼されたようなわけである。
のちに、彼女にそのことを伝えたとき、彼女の表情がよかった。彼女は、パッと頬を赤らめて、
「あら、あたしは真鍋さんの絵に興味があるので、その場でみせていただいていただけです」
と、そう言ったのだ。
おそらく真鍋さんは、このことに気づいてはいまい。が、彼女のちょっとした仕草が真鍋さんを喜ばせ、わたしまでホメられたのである。
大鵬といい、彼女といい、キッカけは好奇心だった。とくに意識して松坂君の靴をもちあげたり、画家の封筒を確かめたわけじゃないけれど、それが、図らずも他人の好意を誘うのである。
同じ動作をとっても、
「なんてキザな奴だろう」
と言われることもある。どうせのことなら好意を誘ったほうがトクだが、さて、そのためには日頃の立ち居振舞いがモノを言う。
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