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男の日曜日58

时间: 2020-02-07    进入日语论坛
核心提示:夫の可能性息子の担任に、「お宅のお子さんは、主要教科もたいしたことはないし、体操もヘタだし、発表能力もないようだし」と言
(单词翻译:双击或拖选)
夫の可能性

息子の担任に、
「お宅のお子さんは、主要教科もたいしたことはないし、体操もヘタだし、発表能力もないようだし……」
と言われて、恵子さんはカッとなった。そうして、気がついたら、
「そうでしょうか」
と、反論していたのである。
「でも、算数の計算も好きですし、詩を書くのも、楽しそうにやっています。それに、たとえヘタでもサッカーに大張り切りで出かけていますわ」
恵子さんが息子の道夫くんのいいところを並べたてれば並べたてるほど、若い担任の先生は冷やかに、
「いいえ、ダメです。なにしろ、テストの点に結びつかないんだから、どうにもなりません」
と言い放って、
「ま、親の欲目からみれば仕方がないことかも知れませんけど」
と笑うのだった。
一人息子の道夫は、小学校四年生。学校としても、
「そろそろ進路を決めたら……」
というので、父兄の個人面接が行われたのだった。
その夜、恵子さんは、プンプンになっていて、
「ただいま」
夫の剛が帰ってくるのを待ちかねるようにして、
「あなた」
と呼びかけた。そして、
「あたし、きょう、学校で、ひどい目に遭ったわ」
と、ことのテンマツを語って聞かせたものである。
「ウム」
うなずく夫に、
「ねえ。子供は、もともと可能性のかたまりのようなものでしょう? いまは眠ったような子供でも、やがて目ざめれば活発に動き出して、本領を発揮するわよ、ねえ」
と畳みかけて、
「それなのに、あの先生ったら、あんまりだわ。PTAで問題にしてやろうかしら」
と、いきまいた。
その見幕に、
「おい、おい」
夫の剛も呆《あき》れて、
「いい加減にしないか」
と苦笑しながら、
「さ、そんなことより、飯だ。ハラが減ったよ」
と言ったから、たまらない。恵子さんのヒステリーが爆発して、
「なんです、あなたまでが道夫のことをバカにして……」
と、それはもう、大変だ。
「……」
絶句している剛に、
「あなたが、そんなことだから、道夫までがいじけてしまうんだわ」
と言いつのって、
「そりゃあ、あなたは会社で精々が課長どまりかも知れないわよ。でも、息子の道夫にだけは、そんな人間になってもらいたくないから、あたしたち、いっしょうけんめいなんじゃないの!」
これには、さすがに大人しい剛も怒り出して、
「きみィ、言いすぎだよ」
剛の上衣《うわぎ》を脱ぐ手が止まった。そうして、
「道夫のことを、もともと子供は可能性のかたまりでしょって言ったのは、誰だい? きみじゃないか。そのきみが、夫であるボクのことを課長どまりとキメつけている。それじゃあ、ボクにはまるっきり可能性がないみたいじゃないか」
「……」
こんどは、恵子さんが黙る番だった。恵子さんにしてみれば、日頃は無口な剛が、こんなに喋《しやべ》りまくるとは、夢にも思っていなかったのである。
「学校の先生に、子供がダメだと言われたのを、そうじゃないって否定するのは、たしかに親心さ。そうして、そんな子をなんとか温かくみつめてやるのが、親の義務であることは、わかる」
「……」
「しかし、その子の母親が夫のことを課長どまりとキメつけておいて、ホントに子供のことを温かくみつめていくことができるだろうか? まず母親がやることは、夫のことを温かくみつめることじゃないのかね?」
正直な話、恵子さんは、久しぶりに夫の肉声を聞いたような気がした。そうして、
「ゴメンナサイ、とにかく一杯つけるわ」
と、台所へ走ったのだった。
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