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ネコの住所録01

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:二 重 猫 格私は引っ越しをすると必ず、近所で飼われている猫をチェックすることにしている。アパートでは動物を飼うことを禁じ
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二 重 猫 格

私は引っ越しをすると必ず、近所で飼われている猫をチェックすることにしている。アパートでは動物を飼うことを禁じられているため、よそのうちの猫と親交を深めようという魂胆なのだ。幸いまわりは古くからの住宅地でちゃんと庭もある家が多く、猫を捜すのには全く苦労しない。ちょっと歩けば必ずうろうろしている猫の五、六匹に会える。自らすすんで通りをいく人々に声をかけている猫がいるかと思うと、おびえてすぐ生け垣の中に隠れてしまうのもいる。逃げたと思って通りすぎようとするものの、何となく視線を感じるので、ふりかえってみると、さきほどの猫が上目づかいにして、私のことを、じーっと見ていたりする。そのほか、家の内で飼われているために、外の景色に慣れていない、アメリカン・ショートヘアなどが、呆然と道にへたりこんでいることもあるのだ。そして最近では、おなじみさんになった猫も何匹かできたのである。
あるとき、散歩をしていたら十メートルほど離れた日だまりに、緑色の首輪をした茶色いオス猫が突っ伏していた。前足も後ろ足もビローンと伸びきっている。
「車に轢《ひ》かれちゃったのかしら」
と、じっと見ているとかすかに息をしている気配もある。
「もしかしたら轢き逃げされて、瀕死《ひんし》の状態なのかもしれない。それだったら獣医さんに連れていかなきゃまずいだろうし……どうしよう」
おそるおそる近づいていっても、相変わらずベタッと地べたにはりついたままだ。だけど間違いなく息はしている。こりゃあえらいことだと猫を抱きかかえようとしたとたん、道端の古い木造家屋からよたよたとおじいさんが出てきた。そして困り半分、嬉しさ半分といった感じで笑いながら、
「ゴンちゃん、またそんなことしてるの。みんながびっくりするから早く家の中に入りなさい」
と猫に声をかけた。するといままで瀕死の体《てい》だったはずのゴンちゃんは、
「ニャー」
と返事をしたかと思うと、むっくり起き上がって平然と家の中に入っていってしまったのである。
「あの子はねえ、いつもああいうことをしてるんですよ。歩いてる人がみんな死んでるんじゃないかとびっくりしちゃってね。何でかわからないんだけど、道路にはいつくばるのが好きなんだよ」
おじいさんはとっても嬉しそうにいった。もしかしたらゴンちゃんは内心、
(へへへ、また一人だまくらかしてやった)
と、ほくそえんでいるのかもしれない。それから私は何度もゴンちゃんが道路に突っ伏しているのを見た。私は事情を知っているから、ぷっと笑いながら見ているけれど、子供を前と後ろに乗せてのんびり自転車をこいでいるおかあさんなどは、
「キャー、猫が死んでるぅ」
といいながら、倒れ伏すゴンちゃんの横をすさまじい勢いで疾走していったりする。女子学生が、
「生きてるのかしら、死んでるのかしら」
といいながら遠巻きにしているのに、ゴンちゃんは微動だにしない。彼らが去ってから、
「またやってるの」
と、ゴンちゃんに声をかけると、彼はそのままの体勢で、
「ニャー」
と返事をする。ただただ道路上の轢死体《れきしたい》と化すことに執念を燃やしているのである。
もう一匹のおなじみさんもオスである。これは私が勝手に「ブタ夫」と名づけた。体も顔もコロコロとしていて、見るからにふてぶてしいグレーと黒のキジトラである。この猫は私が声をかけるより先に寄ってきた。寄ってきたといってもゴロゴロと甘えてきたのではなく、引っ越し当日に、
「何だ、こいつは」
というふうに、一メートル離れたところからじっと見ていたのだ。いままでの経験からいうと、
「やあ」
と挨拶《あいさつ》すると、興味を示した猫は何か声を発するか、尻尾を動かすものなのだが、彼は無表情のままで私の顔を見上げている。
「あんた、どこの猫?」
そういっても、ふんと横を向いて首筋を掻《か》いたりしていた。最初の出会いのときは何のコミュニケーションも持てなかったが、それからほとんど毎日彼と会うので、とりあえず名前くらいはつけようと、その風体《ふうてい》から「ブタ夫」と命名したのである。
ブタ夫は向かいの大きな家で飼われていた。立派な門のなかの陽の当る場所に、みかん箱のベッドを置いてもらい、大股を開いて箱の中でドデーッと寝ている。たまに口が半開きになっていることもある。飼い猫特有の無防備さである。
「おい、ブタ夫」
小さい声で呼ぶと、耳だけがピクッと動く。
「そんな格好で寝てると襲われるぞ」
そういうと後ろ足をピクピク動かしたりする。だけど絶対起きない。電車の中で背広をきちんと着たおじさんがよだれをたらして寝ていることがあるが、それとよく似た光景である。私がしつこく声をかけるので、少しは興味をもったのか、それからブタ夫は私が彼に気がつかないと、自分の方から声をかけるようになった。それが地の底から湧いてくるような、
「ブニャー」
という押しつぶした憎たらしい声である。それも門柱に寄りかかってパンダ座りをしながらである。まるで、
「おい、おまえ、元気かよお」といわれているようなのだ。
「何だ、ブタ夫」
というと、彼はもういちど、「ブニャー」という。いつもただそれだけだ。足もとに来て愛想をふりまくわけでもなし逃げるわけでもなし、ちょっとかまってやるかという雰囲気なのである。
猫をかまっていると彼が人の家で飼われていることをついつい忘れてしまう。ブタ夫、ブタ夫と私が話しかけていたら、突然、窓が開いた。そして品のいい老婦人が顔をだし、
「どうしたの、チャーリー」
などとのたまった。
(こいつ、チャーリーなんていうハイカラな名前だったのか)
ブタ夫ことチャーリーは、飼い主が顔を見せるや、どこをどうすればでるのかと思うくらいの可愛い声で、
「ニャーン」
と鳴いて、尻尾を振りながら家の中に入っていった。幸い老婦人は私には気がつかなかったようで、私は中腰になってそそくさと帰ってきた。いくら彼がチャーリーでも、私にとってはブタ夫である。しかしいくら私のことを「ブニャー」と呼んでかまってくれても、御飯をくれる飼い主とはしっかり差をつけているのを知ったとき、私はちょっぴり淋しくなってくるのである。
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