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ネコの住所録04

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:犬にみる民族性道端を歩いている犬を見ると、何となく飼い主の性格がわかるような気がする。目が合うと尻尾をちぎれんばかりに振
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犬にみる民族性

道端を歩いている犬を見ると、何となく飼い主の性格がわかるような気がする。目が合うと尻尾をちぎれんばかりに振って愛想をふりまく者。恥ずかしそうに目をそらしながらも、遠慮がちに尻尾を振る者。ツンと横を向いてしまう者。キョトンとして顔を見上げている者などさまざまである。脱糞《だつぷん》も周囲の目を気にしつつ電信柱の陰でこっそりする者。飼い主が地べたに新聞紙を敷くのを、まだかまだかというふうにクンクン鳴きながら腰を揺する者。道路のど真ん中で立ち止まっていると思ったら、突然ぼたっと落とし物をしていく大胆な者もいてなかなか面白い。
今まで海外旅行は三か所しか行ったことがないので、そのとぼしい経験からしかいえないのだが、国によって犬や猫の態度がずいぶん違っていた。まだ犬を食する習慣のある某国に旅行した友人の話によると、道路をとぼとぼ歩いている犬が、どことなく、
「人間なんか絶対に信じてないもんね」
と疑り深い暗い目つきをしていたという。市場など人が集まっているような場所には絶対に来ない。目が合うと、やせた体をビクッとふるわせて、木や建物の陰に隠れて様子をうかがっている。こちらがにこにこして近寄っていっても、尻尾を股間《こかん》に巻き込んで、そそくさと姿を消してしまうそうなのである。きっと友だちのジョンやリッキーが、にこにこした人間につかまったまま、帰ってこないことをしっかり覚えているのだろう。
私はまだそういう習慣のある国に旅行したことがないため、そのような暗い目つきの犬には会ったことがない。みんなそれなりに今の状況に満足しているように見えた。特にアメリカの犬は体は大きいが、とても人なつっこかった。声をかけてやるとうれしそうに私のまわりをぐるぐる回って愛想をふりまく。頭を撫《な》でてやるととても喜んで、お返しにローストビーフみたいな舌でべろんべろんと顔をなめまわしてくる。人見知りをしないし公園のベンチで座っていると、尻尾を振りながら、
「こんちは」
と自発的に挨拶をしにきたりするのだ。私は英語がうまく話せないので、日本語で話しかけても、それなりに反応する。
「よしよし、いい子だねえ」
といいながら、体をさすってやると、これ以上の喜びはない、といった様子で腰を振っていた。日本語で「お座り」といっても全く通じなかったが、犬のほうが、
「こいつの英語はわからないけど、きっとこういいたいんだろう」
と気をつかってくれたような気さえしたのだった。
その正反対に無愛想の極みだったのがパリの犬である。黒い毛皮を着ているマダムは黒いプードルを、白い毛皮を着ているマダムは白いプードルを従えているのが、一種異様な雰囲気であった。日本でもプードルをつれている人がいるが、どことなく本場のは顔つきが違う。可愛気のただよっている日本育ちとは違って、パリ暮らしという自信があるのかいつも顎《あご》を上げてすまして歩いているのだ。かまおうとしても、そっぽをむいていてとっても冷たい。チャウチャウもでぶでぶした体ですまして歩いているし、ボルゾイに至ってはあの長い顔でモップのような体毛を風になびかせて気取っていた。
「あんたたちは日本にいたら、そんなに気取っていないはずだけどね」
といっても、完全に無視された。彼らには、
「フランス人の御主人様以外には愛想をふりまきません」
という確固たる主張がありそうだった。が、彼らがすましている背後から蹴《け》っとばしてやりたい気分になったのも事実である。
スペインの人はとても人なつっこかったが、異常なくらいすり寄ってきたのもやはりスペインの犬である。散歩をしていると、むこうから首輪をした一匹の白と黒のぶち犬が歩いてきたので、
「こっちにおいで」
と手招きしてみた。すると犬ははたと立ち止まり、不思議そうな顔をして首をかしげてこちらを見ている。しゃがんで、
「おいで、おいで」
と呼んでみると、事情を悟った犬はものすごい勢いで私のところに走ってきた。目の前でちぎれんばかりに尻尾をふりながら、
「クーン、クーン」
と鼻をならしていたかと思うと、突然、ばねじかけのおもちゃみたいに、ピョン、ピョンとその場跳びをはじめてしまった。あまりの喜びようにこちらのほうが驚き、この興奮を鎮めるにはどうしたらいいかしらと心配になったくらいだ。頭を撫でてやるとグフグフいいながら体を擦り寄せてくる。ふと気がついたらその犬の飼い主の親子がそばにいて、指さしながら笑っていた。
その町の人々が集う公園ではシェパードが鎖を解かれて走り回っていた。いくら犬が好きだといっても、さすがに繋《つな》がれていない大きなシェパードが寄ってくるとちょっとビビった。しかし図体は大きくてもやっぱり犬は犬だった。彼は友好のしるしとして尻尾を振って私を見上げ、そして、すっくと立ち上がった。ひえーっと後退りしたとたん、私は彼の前足でがしっと抱き締められ、ペロペロと耳や顔や首筋をなめられてしまったのである。身長百五十センチそこそこの東洋人の女と、大きなシェパードが公園でひしと抱き合っている姿は相当に面白い光景だったらしく、周りの人々はみんなゲラゲラ笑っている。
「いったい飼い主は誰なのかしら」
きょろきょろ見渡してみると、ハンサムな若い男性が、少し離れて鎖を持って立っていた。
「これがきっかけになって、恋の花が咲くことがあるかもしれない」
と期待して犬と抱き合っていたら、今度はシェパードはあおむけに寝ころんで、「服従します」という意思を表明し、まるでマグロのように地べたに寝たまま、前足をかわいくちぢめて私にお腹さすりを求めたのだった。それを見た飼い主はふふふと笑いながらこちらにむかって歩いてきた。
「きっとお茶へのお誘いくらいあるわ」
しかし彼は地面に寝っころがっている犬を叩き起こし、鎖につないで、
「じゃあね」
というように私に軽く手をあげて帰っていってしまった。犬の私に対する執心ぶりとは違って、飼い主のほうは私に全く興味がなかったようだった。
海外旅行で現地の男性とアバンチュールを楽しむ女性は数多くいるだろうが、世の中広しといえどもスペインまで行って、犬に抱き締められて耳までなめられた女は私くらいのものだろう。外国を知るにはまず手初めとして、その国の女性と寝てみるといいという男性がよくいる。私の場合その窓口は犬である。旅行から帰ってくるたびに、
「次は犬ではなくて、絶対に地元の男性と友好を深めよう」
と心に決めるのだが、残念ながらここ十五年間は、期待は大ハズレで、各国の犬にペロペロされるだけで終わっているのである。
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