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ネコの住所録09

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:押入れの主両親は新婚当時、大家さんの二階の四畳半に間借りをしていた。父親は学校を卒業して新聞社に勤めたものの、どうしても
(单词翻译:双击或拖选)
押入れの主

両親は新婚当時、大家さんの二階の四畳半に間借りをしていた。父親は学校を卒業して新聞社に勤めたものの、どうしても画家になる夢が捨てきれず、勝手に会社をやめてしまったので勘当の身であった。それから独学で絵を描いていたものの、ちっとも金にならない。当然の如く、新婚生活は悲惨であった。小学生の教材用ドリルの「八百屋のおじさん」や「りんご」や「みかん」の絵を描いては、ちょぼちょぼと小金を稼いでいた。もちろんそれだけでは生活できないので、母親が近所からたのまれて洋裁や和裁の内職をしていた。ところが部屋に布地や反物を広げると、父親のいる場所がない。仕方なく仕事のない彼は私をおぶい紐《ひも》でおぶって、小石川の伝通院付近をうろうろしているという有様だったのである。昭和三十年、世の中の人々は、
「一所懸命働いて、豊かな暮らしをしよう」
と意気込んでいるのに、父親は昼間っから何もせずにぷらぷらしている。町内では「何をしているのかわからない妙な人」として有名だったのだが、大家さんが、
「あの若夫婦は悪い人ではありません」
といっていつもかばってくれていたのであった。
あるとき、朝から行方不明になっていた父親が、夕方になってやっと帰ってきた。
「おかえり」
といって戸を開けた母親は、にこにこしている父親の背後に変な影らしきものがあるのに気がついた。もう一度よくよく見ると、彼は毛だらけの生き物をおぶっている。首をかしげている母親を見ながら、父親は、
「拾ってきちゃった」
といって狭い部屋に入ってきた。母親は彼が背中におんぶしていた生き物を、電灯の下で見てびっくり仰天した。それは歳をとった大きなシェパードだったのである。
「いったい、どうしたの」
と母親がたずねると、彼は少し怒ったような顔をして、
「公園に置き去りにされていたんだ」
といった。犬はお座りもすることができず、ただ畳にへたりこみ、はたはたと尻尾を力なく振っている。父親が近所の公園で朝からぼーっとしていると、銀杏《いちよう》の木にこのシェパードが荒縄でくくりつけられていた。いつ飼い主が来るのかと何気なく見ていたが、一時間、二時間たっても誰も迎えに来ない。ついつい心配になって、一日中、犬を観察していた。しかし、夕方になっても飼い主が現れないので、かわいそうになって連れてきたというのだ。母親が、
「もしその後に飼い主が来たらどうするの」
といっても、
「こんな老犬を放っておく飼い主なんてろくな奴じゃない」
といって、すっかり自分が飼う気でいる。
「よかったなあ。もう安心だよ」
犬も頭を撫でられてほっとした顔をしている。母親も動物は大好きだが、何しろ住まいは四畳半ひと間である。おまけに赤ん坊がいる。老犬とはいえ大きなシェパードを飼う環境では全くないのだ。
「困ります」
心を鬼にして母親はいった。すると今までへたりこんでいた犬が、
「クーン」
といいながら体を起こし、訴える目つきで母親をじっと見上げる。運悪く目が合ってしまった彼女は、それ以上抵抗できず、四畳半で犬との同居を余儀なくされてしまったのであった。
まず犬は「セピ」と名づけられた。セピの住まいは父親の命令により、押入れに作られることになった。いくら人のよい大家さんとはいえ、廊下で犬を飼っていたらたまげるに決まっている。部屋のなかを見回した結果、場所は押入れしかなかったのである。中に入っていた荷物は畳に積み上げられ、ボロ布が敷かれてベッドが作られた。
「セピ君、よかったねえ」
父親は押入れの主になったセピに声をかけ、とても満足そうだった。複雑な思いなのは母親である。母乳を飲んでビービー泣く赤ん坊がいるのに居候《いそうろう》まで来た。それも犬である。住んでいるのは四畳半。夫は定収入なしの限りなく失業者に近い自由業。老犬とはいえセピだって空気だけで生きているわけではない。格安の家賃で部屋を借りて、やっと生活できるくらいなのに、これからのことを考えると途方にくれるのは当たり前であった。
扶養家族がふえたというのに、相変わらず父親には仕事がなかった。彼は母親に追い出されないときは、私のために紙で人形を作ったり、風車を作ったりして遊んでいた。それに飽きると私をおぶって散歩にいく。そのあと御飯を食べ、再び家のなかでぷらぷらする。そして夜になると、ほとんど歩けないセピをおんぶして、散歩にでかけるのだ。とにかく近所の人々に、犬を飼っているのを知られないようにするのが大変だったのである。
ところがまたひとつ問題が起こった。ただでさえ夜泣きがひどい私が、ますますギャンギャン泣くようになった。母親が驚いて調べたら、何と私の体はノミに食われてまっかっか。セピのノミが大移動してきたのである。環境からいって犬小屋に人間と犬が一緒に住んでいるのと同じだから、生まれたてで皮膚の軟らかい赤ん坊が、ノミの餌食になるのは当然であった。でも、やはりセピを追い出すことはできない。体中まっかっかになった私は、
「これで我慢しておくれ」
とキシロ軟膏《なんこう》を塗りたくられて、かゆみに泣いているしかなかったのであった。
二か月後、セピは押入れで死んだ。両親はあまりに悲しくて、ふたりでおいおいと泣きながらセピの亡骸《なきがら》を、二枚しか持っていないシーツのうちの一枚で包んだ。そして深夜、こっそり近所の野原にいって埋めてやった。まっかっかだった私の体ももとに戻った。今でも母親は街なかでシェパードを見かけると、
「セピによく似ている」
という。セピもかわいそうだったけど、私だってかわいそうだった。私はノミに食われて体がまっかっかになったときの記憶がなくて、本当によかったと思っている。
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