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ネコの住所録21

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:グルメな鳥たち子供のころ、引っ越しが多かった私の家では、犬や猫が欲しくても、おいそれとは飼えなかった。のら犬や迷い猫をし
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グルメな鳥たち

子供のころ、引っ越しが多かった私の家では、犬や猫が欲しくても、おいそれとは飼えなかった。のら犬や迷い猫をしばらく預かったりしたことはあるのだが、やっぱりきちんと自分の家族の一員として、生き物を飼いたかった。こちらが話しかけたら、やはりそれに反応してもらいたい。そういう私たちの気持ちを満たしてくれる生き物は、散歩もさせる必要がなく、隣近所に迷惑をかけない、鳥しかいなかった。他の動物に比べて手軽に飼える鳥は、うちにはなくてはならない存在だったのである。
鳥カゴの中にきれいな水と餌と菜っ葉をやっておけば、毎日、
「ピッピ」
とかわいらしく鳴いてくれる。一人前にあくびもする。飼い主の私たちを見ると、止まり木を横歩きして、すり寄って甘える。うれしそうなときは本当にうれしそうな顔をするし、不満があるときはぷいっとそっぽを向いたり、意外に図々しかったり、あんな小さな頭の中にも、いろいろな感情が渦巻いているのかと思うと、いじらしい反面、とても不思議な気がしたのであった。
うちで飼っていた十姉妹、文鳥、インコは餌に関しては、とてもうるさかった。一日一回、鳥カゴから出て遊ぶことより、餌のほうが楽しみだったようである。
近所にはAとBの二軒のペットショップがあった。ふだんはA店で餌を買っていたのだが、その日はたまたま臨時休業だったので、B店で餌を買った。私たちにはどちらの餌も同じ、ただの「鳥の餌」に見えるのだが、うちの鳥たちは、そのふたつのペットショップの餌に対して、明らかに差をつけていたのである。
Aの餌だと、
「待ってました」
とばかりに食らいつく。ところがBのほうだと、
「ピッピ」
と喜んでとびついて、ガッとくちばしをつっこみ、餌の粒をつまんだとたん、うれしそうにピンと上がった尻尾に勢いがなくなり、
「ピー」
とも鳴かなくなってしまう。無言で餌入れから離れ、止まり木にとまったまま、私たちにむかって、訴えるような目つきをするのだ。
「せっかく買ってきたのに。食べないの」
と一所懸命勧めても、餌入れに近づこうともしない。
「買ってきたばかりだから、食べなさい」
何度、説得しても、鳥たちは止まり木にとまったまま動こうとしない。体中から、
「不満」
という二文字を発散させていたのである。それを見ていた母親は、横から、
「ぜいたくをいうんじゃありません。それしかないんだから」
と叱った。すると鳥たちは餌入れのふちにとまり、くちばしを入れて頭を左右に振りながら、中に入れてある餌をそこいらじゅうに、散らかし始めたのである。
「まあ……」
母親はびっくりして、鳥たちのヒステリーを眺めていた。まるで自分の食べたいものが食卓に出てこないので、食卓の上の食べ物をすっとばしてしまう、聞き分けのない子供と同じだった。あっけにとられている私たちを後目《しりめ》に、鳥たちは餌のほとんどを散らかすと、止まり木に戻って「ふん」と横をむいていた。
「ピーちゃん、チビちゃん」
と声をかけると、ちらっとこちらを見るものの、
「あんたたちなんか、知らないよ」
というようなそぶりである。思い通りの餌をもらえないと、飼い主に対してすごく冷たい態度をとるのであった。
「他に食べるものがなければ、気にいらなくても食べるわよ」
母親も、いちいち鳥の機嫌をとっていられるかといって、意地を張っていた。私と弟は両者の間に挟まれて、
「困ったねえ」
とため息をついていたのである。
ところが母親の考えは甘かった。
「お腹がすけば、何でも食べる」
と、たかをくくっていたのだが、うちの鳥たちは根性がすわっているというのか、意地っぱりというのか、一日たっても、二日たっても、
「まずい餌は、絶対、食べない」
という態度を貫いたのである。相変わらず、体中から、
「不満」
の文字を発している。水を飲みながら、冷たい目でこちらをちらっと見る。そしてばたばたとはばたきしながら、
「ビービー」
とうるさく鳴く始末であった。
「それしかないの」
を連発していた母親だったが、鳥たちのかたくなな態度に根負けし、
「もう、あんたたちには負けた……」
とつぶやいて、夜だというのにA店まで餌を買いにいくハメになった。
母親が餌を買って帰ったとたんに、鳥たちは、
「ピッピッピ」
と、うれしいときのかわいい声を出した。現物をまだ見ていないのにである。餌入れを取り出す間も、かわいい声を発しながら小躍りしている。そして待ちに待ったおいしい餌をもらったとたん、頭を餌のなかにつっこんで、がつがつと食べ始めた。鳥カゴをのぞきこんでいる私たちに対しても、彼らはやたらと愛想をふりまき、昨日、おとといとは全く違う態度なのだ。
「どっちがまずいかおいしいかなんて、ちっともわからない」
母親は鳥の餌を、ひとつまみずつ食べながら、何度も首をかしげていた。私と弟はがつがつといつまでも餌を食べている鳥たちを眺めながら、
「こいつらにも味覚があるのか」
と、母親と同じように首をかしげてしまったのである。
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