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ネコの住所録29

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:ドライブはお好き?外国では犬を車に乗せるなど、当然のように行われている。タクシーの運転手さんでさえ、飼っている犬を同乗さ
(单词翻译:双击或拖选)
ドライブはお好き?

外国では犬を車に乗せるなど、当然のように行われている。タクシーの運転手さんでさえ、飼っている犬を同乗させ、助手席は犬の席と決まっているという話も聞いたことがある。キャンプに行ったり、買い物に行ったり、犬は家族の一員である。最近、日本でもそのような姿を見かけるようになって、車に犬が乗っていると、
「どんなふうにしているのかしら」
とついつい犬の顔をのぞいて見ることがあるのだが、どの犬も嫌がることなく、結構うれしそうにしている。窓から体を乗り出して顔面に風を受け、ものすごく喜んでいるものもいる。そんなことをしたら、風で目の玉が乾いてつらいのではないかと思うのだが、そんなことものともしていない。そして渋滞にひっかかって、永い間、車が止まっていると、さも退屈そうに、ぼわーっと大あくびをしている犬もいて、なかなか面白いのである。
私が小さいころの話だが、隣の家で飼っていたピーターという名前の犬が、その家のお姉さんと一緒にドライブに行くことになった。
「すごいなあ。まるでアメリカの犬みたいだ。かっこいいなあ」
みんなにすごいすごいといわれて、ピーターも出発前は尻尾をばんばん振って、張り切っていた。車に乗り込むとき、ちょっと尻込みしたので平気かしらと思ったのだが、お姉さんが、
「走り出せば、大丈夫よ」
といい切った。車を買ったら犬を乗せて走りたいというのが、彼女の夢だったのである。無事ピーターも助手席に乗り込み、私たちは、
「いってらっしゃーい」
と手を振って、お見送りした。夕方、お姉さんたちが戻ってきた。
「おかえりなさーい」
みんなでお出迎えすると、お姉さんの顔がとても暗い。どうしたのかと思ったら、ピーターが途中で酔ってしまい、大騒動だったというのである。
「あー、まいったなあ」
お姉さんは、ピーターを抱きかかえて車から降りてきた。
「大丈夫?」
駆け寄ってピーターの顔を見たら、今まで見たことがないくらい、ものすごく情けなさそうな顔をしていた。そしていちおうは尻尾を振っているものの、力強さは全くなく、体中からトホホホという雰囲気が漂っていたのである。犬は犬なりに、マズイと思ったのだろう。それからピーターは絶対に車に乗ろうとはしなくなり、隣の家族全員がドライブに行くときでも、じっとお留守番をすることになってしまったのである。
ある人は、犬を車に乗せてから、とっても利口になったといっていた。その犬は雑種で、名前をポチといった。ところが彼はいまひとつ聞分けがよくなかった。そこの家では、
「捨て犬だったし、雑種だから仕方がない」
と半分、あきらめていたのだそうだ。ところが先日、夫婦で車で出かける用事があり、ポチも一緒につれていこうということになった。子供たちは、
「酔うからやめたら」
と止めたのだが、彼女は酔ったときの準備として、バスタオルやビニールシートやらを持ち、ポチを車に乗せて出発したのである。いざ乗せてみたら、彼は酔うどころか、窓に前足をかけて、外の景色を見ている。
「ポチ、気持ち悪くないね」
と彼女が声をかけてふと下を見ると、彼は尻尾をばたばた振って、大喜びしているというのであった。
往復四時間、ポチはおとなしく外の景色を見て、バスタオルやビニールシートのお世話にならなくても済んだ。
「よかったねえ、酔わなくて」
と夫婦で話をしていたのだが、その翌日から、ポチの態度がころっと変わり、信じられないくらい、いい子になってしまったのである。
犬小屋の前で、でろーんとしていたのが、ちゃんとお座りもするようになった。餌を食べるときも、がむしゃらにむしゃぶりつくこともなくなり、「おあずけ」というときちんと待っている。今までは散歩をしても、ちっとも飼い主のいうことをきかずに、あっちこっち気ままに歩き回ったり、突然、走りだしたりしていたのに、勝手にうろうろすることがなくなり、ちゃんと道路の端を歩くようになった。そして飼い主の顔を時折見上げながら、
「これでいいでしょうか」
といいたげに、様子をうかがうようになったというのだ。
「あんなにいい子になるなんて、思わなかったわ」
彼女は大喜びしていた。たった一度、ドライブに連れていってもらっただけで、どうしてそんなにころっと犬の態度が変わるのか、私には全くわからない。話を聞いた限りでは、ポチにとってドライブはものすごく楽しい出来事だったのだと思う。だから、
一、飼い主のいうことを聞いて、いい子にしていれば、また連れていってくれるのではないか、と期待している。
一、人間でも新しい経験をすると、ひとまわり人間が大きくなるというから、それが犬にもあてはまり、気ままだったポチもドライブを体験し、
「これまでの僕は、いけなかった」
と景色を見ながら反省した。
以上、ふたつの仮説が立てられるが、ポチに聞かないと、いったいどっちが正しいのかはわからない。しかし態度が変わったということは、ポチに、
「今まで自分は、とってもいけないことをやっていた」
という意識があるということだ。これはちょっと驚きだった。
ポチの飼い主である彼女は、
「行儀のよくない犬は、車に乗せるに限る」
と近所の奥さんたちにいった。それを聞いた奥さんたちは、車に犬を乗せて買い物に行ったりしたが、なかには素行が直るどころか、酔ってぐったりした犬も出てきたため、この説は現在、町内で物議をかもしているらしいのである。
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